ヒトとマウスの視力の違いは、眼の性能差でだいたい説明ができそう
また呼ばれたので「ヒトとマウスの視力の違いの原因」について考察してみます。
dhtanaka
ヒトに比べてマウスは目が悪いとよく言われるけど、具体的にはどのレベルのどの細胞の精度が特に低いの?網膜の細胞?それともLGN?大脳新皮質?全部?> @symphonicworks
結論から言うと、眼の性能差でだいたい説明ができそうです。
まず、ヒト中心窩で45 cycles per degree (cpd、輝度がサイン波に基づいて変化する縞模様の、視野角あたりの周期)(Frisen and Glansholm, 1975)。45 cpdはいわゆる視力で2.0くらい。周辺に行くほど見えにくくなって、視野角80度付近では0.8 cpd(視力0.05くらい)。この傾向は、網膜の視細胞の密度が中心窩付近で高く、周辺ほど低いという事実と一致する(Missotten, 1974)。つまり、視細胞の密度が高い中心窩では視力が良い。
マウス(C57BL/6)の視力は0.5 cpdくらい(Prusky et al., 2000)。つまり、マウスの眼の解像度はヒトと比べて約100分の1。
眼で物を見る能力、いわゆる視力は、網膜に結像するためのレンズの性能と、網膜の性能のふたつの要因が考えられる(Campbell and Green, 1965)。レンズは似たようなもんと考えて、網膜の性能に着目する。
ヒトの網膜の中心窩付近では半径200 μmの円の中に約3万の細胞が居る(Missotten, 1974)。
30,000 (cells) / (0.2 (mm) x 0.2 (mm) x pi) ≒250,000 (cells/mm^2)
ヒトでは中心窩付近の視細胞は錐細胞。
マウスでは、750 μmの長さの切片の中に視細胞が約1,000 cells(Carter-Dawson and LaVail, 1979)。細胞を直径約10μmの円柱形と仮定して、
1,000 (cells) / (0.75 (mm) x 0.01 (mm))≒13,000 130,000 (cells/mm^2) 錐細胞はこのうち約3%で約4,000 (cells/mm^2)110222訂正
別のもう少し詳細な推計だと、マウス網膜の中心付近で桿細胞が437,000 (cells/mm^2)、錐細胞は12,400 (cells/mm^2) (Jeon et al., 1998)。110222追記
ここまでまとめると、視力を測るような条件(明るいところ)で主に動作する錐細胞の密度は、ヒト網膜250,000 (cells/mm^2)に対して、マウス網膜では4,000~12,400 (cells/mm^2)。ヒトの60~20分の1。マウスの解像度はヒトの100分の1だったので、まだ開きがある。のこりは眼球の大きさで説明できそう。
マウスの眼球はだいたい直径2~3 mm(Mort et al., 2009)。ヒトだと、25 mmくらい(下記「目の事典・目の構造」参照)。眼球の構造がヒトとマウスの間で相似だとすると、眼球の大きさが10倍ならば、ある視野角を占める光の棒が照らし出すマウス網膜の範囲は、ヒトの約10分の1。ある視野角を占める光が網膜に到達したときに、作動する視細胞の数は、視細胞の密度×光の当たる範囲だから、これでだいたい桁が合いましたね。視野角あたりの視細胞の数が多いならば、より小さな視野角の光を判別するために有利でしょう。
このように、光が目に入ったときに活動する視細胞の数の違いがヒトとマウスの視力の違いをよく説明すると思います。例えれば、デジカメの画素数の違いですな。
○気になること1
ICRなどのアルビノマウスだと網膜に色素がないので、網膜に入った光が乱反射して、像がぼやける。そのため、ICRは有色のC57BL/6などよりもさらに視力は劣ると推測できる。
○気になること2
マウスの網膜神経節細胞の分布から推測するに、中心部とそこから2 mmほど離れた周辺部とでは細胞密度に4倍程度の違いがあるようだ(Drager and Olsen, 1981)。とはいえ、上の実験で中心部750 μmをとってきたとすれば、上記の値はまぁ中心部分の細胞密度を表していると考えてよさそう。
○気になること3
マウスなどの齧歯類では網膜の視細胞のうち9割以上が桿体なのだけど、ヒトでは中心窩付近の視細胞は錐体がほとんどなのよね(Frisen and Glansholm, 1975)。錐体と比べて桿体は感度が高いって話だけど、マウスの桿体とヒトの錐体ではどっちが高感度かわからん。110222削除
potasiumch
単純に視細胞数の比較ですとマウス中心視は桿体が~4x10^5/mm2という見積もりもあるのでヒトより良さそうですね。 http://bit.ly/ihNO6W @symphonicworks ヒトとマウスの視力の違いは、眼の性能差 http://bit.ly/h4I6whpotasiumch
実際のところ、暗視能力はマウスのほうが高かったりするのかも? @symphonicworks
ここに例示した実験では、視力を測るために、明るディスプレイ等に表示された対象物を弁別する試験を行っていました。これによって測れるのは明るい所での視力、いわゆる明所視力(photopia)でしょう。potasiumchさんのおっしゃるように、桿体細胞がメインになるであろう暗所視力(scotopia)ではヒトとマウスの視力の差は縮まるか、もしかしたら逆転するかもしれないですね。貴重なコメントありがとうございました。110222追記
○気になること4
網膜→視床→大脳皮質の順に神経細胞が繋がっていて、大脳皮質の細胞が発火したときに見えたという感覚が生じる(と思う)。網膜から先だと、眼は問題なくても脳、特に大脳皮質視覚野の機能に異常がある場合にも視力の低下は生じる(Wiesel and Hubel, 1963; Prusky and Douglas, 2003)。種間で視床や視覚野の作りが違う可能性も否定出来ない。
ほなまた
参考文献
- Frisen L, Glansholm A. Optical and neural resolution in peripheral vision. Invest Ophthalmol. 1975 Jul;14(7):528-36.
- Missotten L. Estimation of the ratio of cones to neurons in the fovea of the human retina. Invest Ophthalmol. 1974 Dec;13(12):1045-9.
- Prusky GT, West PW, Douglas RM. Behavioral assessment of visual acuity in mice and rats. Vision Res. 2000;40(16):2201-9.
- Campbell FW, Green DG. Optical and retinal factors affecting visual resolution. J Physiol. 1965 Dec;181(3):576-93.
- Missotten L. Estimation of the ratio of cones to neurons in the fovea of the human retina. Invest Ophthalmol. 1974 Dec;13(12):1045-9.
- Carter-Dawson LD, LaVail MM. Rods and cones in the mouse retina. I. Structural analysis using light and electron microscopy. J Comp Neurol. 1979 Nov 15;188(2):245-62.
- Jeon CJ, Strettoi E, Masland RH. The major cell populations of the mouse retina. J Neurosci. 1998 Nov 1;18(21):8936-46.
- Drager UC, Olsen JF. Ganglion cell distribution in the retina of the mouse. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1981 Mar;20(3):285-93.
- Mort RL, Ramaesh T, Kleinjan DA, Morley SD, West JD. Mosaic analysis of stem cell function and wound healing in the mouse corneal epithelium. BMC Dev Biol. 2009 Jan 7;9:4.
- 目の事典・目の構造
- WIESEL TN, HUBEL DH. SINGLE-CELL RESPONSES IN STRIATE CORTEX OF KITTENS DEPRIVED OF VISION IN ONE EYE. J Neurophysiol. 1963 Nov;26:1003-17.
- Prusky GT, Douglas RM. Developmental plasticity of mouse visual acuity. Eur J Neurosci. 2003 Jan;17(1):167-73.
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名大東山キャンパスまでの電車乗り継ぎメモ+α
僕の通う名古屋大学(名大)東山キャンパスは名古屋市の東側、コアラで有名な東山公園の近くにあります。今回は知っておくと便利な電車の乗り継ぎルートについてメモしておきます。学会や研究室訪問でお越しになる際に参考になれば幸いです。
名大東山キャンパスの最寄り駅、地下鉄名城線名古屋大学駅まで
名古屋大学理学部や工学部などに御用の方はだいたいこちらです。われらが環境医学研究所(通称、環研または環医研)もこちら。環研の場所は特に分かりにくいのであとで説明しますね。ちなみに医学部は鶴舞キャンパス(下記参照)。
まずは名古屋大学アクセスマップをチェック。最寄り駅は地下鉄名城線名古屋大学駅です。そこに至るまでの公共交通機関は名古屋駅からだと、主に2つルートがあります。
名古屋大学駅に着いてから
駅を出ればそこはもう名大東山キャンパスの敷地内です。駅出口の近くに地図を表示した看板もあるので活用してくださいね。
- 東山キャンパスマップ
- 名大で学会などがよく催されるのは、豊田講堂と野依記念学術交流館ですかね。
- 豊田講堂は名古屋大学駅2番出口から出たら、芝生の向こうにでかでかと見えますよ。夜は青色LEDで光る時計台が目印です。
- 野依記念学術交流館へは名古屋大学駅2番出口から郵便局の方に歩いてひとつめの入り口を右折してまっすぐ行くと到着します。ガラス張りのきれいな建物で、小さな学会やシンポジウムがよく催されます。
- さらにそのまままっすぐ坂を上っていくと、耐震補強工事で要塞のような風貌になった環境医学研究所の本館が森の中から現れます。
鶴舞キャンパスに行きたいときは
- 鶴舞キャンパスマップ
- 名古屋大学医学部および病院に御用の方はこちらのキャンパスです(でも環境医学研究所は東山なので要注意)。JR鶴舞駅の病院口が名古屋大学医学部(病院)に一番近いです。地下鉄鶴舞駅からは大学(病院)敷地に入るまでちょっと遠いです。JRで行く場合には新幹線で名古屋駅に着いたら、改札から出ずに、JR中央線、高蔵寺・多治見・中津川方面行きに乗り換えましょう。快速でも各駅でも鶴舞駅に止まりますよ。敷地内に入ると日中はいろんなところに警備員さんがいるので行き先を問い合わせてみるとよいと思います。敷地入口付近に地図の看板もあります。ちなみに駅から見える鶴舞公園は、つるまこうえんと読むのだそうですよ。名古屋豆知識でした〜。
○大幸キャンパスに行きたいときは
- 大幸キャンパスマップ
- 行ったことがないのでマップだけ紹介しておきます。
- 地下鉄名城線ナゴヤドーム前矢田駅と砂田橋駅の中間くらいなのでどっちでもよさそうです。
ほなまた
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これから「研究」の話をしよう。親戚のおっちゃんに「そういえば今なにやってんだ?」って言われたときの対策
研究者の皆様。
盆や正月に親戚一同であつまると、
http://ameblo.jp/hakasetoiu-ikimono/entry-10756832995.html
こんな感じになってませんか?
「そういえば今なにやってんだ?」
そうですよね〜。
親戚のおっちゃんが、大学院とやらに行っている(もしくは修了した)甥っ子、姪っ子との酒宴で、話題にできることといえばこれぐらいのもんですよ。
酒の肴とはいえ研究の話を聞いてもらえるのであれば、せっかくですからひと講演打ってみましょう。
さて、話しはじめるとありがちなのが上記の漫画のように、ついつい同僚や上司に話すような研究概要を口走ってしまうっていうパターン。
心中お察しします(笑)。>親戚のおっちゃん
まぁそりゃいきなり難しいところから入ってもわかんないですよね。
以前も書きましたが、相手にこちらの話を聴く気があるならば、あとは話す側の問題ですよ。
「いまの自分がおもしろいと思うことを、何も知らなかったころの自分に説明するつもりで話す」つもりでいきましょう。
プレゼンするときは相手に合わせて話の導入を作る必要があります。
聞く側の知っている話からだんだんと自分の話したい内容へと導入しましょうね。
実はみなさん自分の知っていることだけをもっと知りたいのですよ(笑)。
学会発表などために同じ分野の研究者向けのイントロは作りましたよね?
できればその調子で時間のあるときに一般向け解説も準備しちゃいましょう。
意外と使う機会ありますよ。
あとは、相手がどこまで知っているかを把握して、そこから話を始めればいいのですよ。
どこまで知っているかわからなかったら、相手に質問しちゃいましょう。
準備をしっかりしてあればあとはトークの腕次第。
このとき、ただ研究の内容を説明するのではなく、相手の共感を誘う感情のカミングアウトを入れ込むのがポイント。自分の感情を先に出す。好き、嫌い、気分、感情を述べる。たとえば、場の雰囲気をネタにするとか。
言うは易く行なうは難し(笑)。
これがなかなか難しいんですよね〜。
かく言う私もまだまだ精進が必要であります。
まぁ、なんとかうまいこと共感を得てトークを盛り上げましょう。
さて、話し終わってどうでしたか?
まぁ最初はうまくいかないもんですよ。
学会発表の前なんかも、何回も練習しますよね?
あらゆる機会を練習と思ってたくさんしゃべっておきましょう。
違う人に同じ話を何度もして、相手のリアクションに応じて話の内容を改変してゆくことで面白いトークになるんですよ。
トークの腕は場数を踏まないと上がらないですよ。(って岡田斗司夫さんが言ってました(笑)。「岡田斗司夫のひとり夜話より。トークのコツはコレだ!」)
さぁ、みなさん、親戚のおっちゃんに「研究」の話をしましょう。
ほなまた
参考文献
- 【夜話】第39弾 恋愛の話 (2009/11/23、大阪・第3回講演) - オタキングex公式サイト
- [02] トークのコツはコレだ! (14:16)
- http://otaking-ex.jp/wp/?p=12969
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研究室を暖かくする3つの小ネタ。Honeywellのサーキュレーター
便利アイテム#39
Honeywellのサーキュレーター
http://www.ccp-jp.com/life/honeywell/top.html
これいいですよ〜。
冬に暖房をいれておくと、頭の辺りはぼーっとするくらい温かいのに、足元ひんやりっていうことがよくありますよね。
サーキュレーターで足元の冷えた空気を天井に向かって送ってやれば、天井近くの暖かい空気が下がってきて、部屋全体の気温を均一にします。
これがまた、驚くほど効果があるんですよ。
足元寒くない!
○機能
- 直進性の高い風を作ります。
○僕の使い方
- 冬は床に置いて、風を天井に向けて空気を撹拌。
- 夏は直当てで涼みます。
○他のアイテムとの組み合わせ
- アイテムってわけじゃないんですが、エアコンやファンヒータのフィルター掃除をこまめにやると、さらに効率上がりますよ。近頃なんだかエアコンの風量が落ちてきたと思いませんか?ほこり詰まってないか見てみましょ〜。
- ほこりを取ったら、エアコンの風量を「強」にするのはいかがでしょう。これも空気が攪拌されて気温の均一化に一役買いますよ。そのかわり、設定温度は暖房なら下げる、冷房なら上げる、というのがいいんじゃないですかね。
ほなまた
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大脳皮質が広がると機能は増えるか?想像してみる。〜マイクロカラムが面白そう。
ネタを振られたので、「大脳新皮質のカラムの数が増えることで可能になるような情報処理って何なんでしょう??」から始まる一連のツイートにコメントしてみる。
suzuki190
大脳皮質のシワって頭蓋骨内の限られたスペースの中でできるだけたくさんのカラムを作ろうとした結果なわけですよね。カラムの数が増えることで可能になるような情報処理って何なんでしょう??RT @dhtanaka: マウスでfoldingがなぜなくなったのかはとても興味深いですよね。
dhtanaka
これは完全に勉強不足で分からないです。丸山あたりが詳しいかな?→ @symphonicworks RT @suzuki190 大脳新皮質のカラムの数が増えることで可能になるような情報処理って何なんでしょう??@TuneHike
カラム構造とは「大脳皮質で見られる同じ特徴に応答する(皮質の深さ方向に)縦に並んだ細胞群」ですね。脳の機能局在論の最小単位とも考えられます。ネコや霊長類の視覚野には、眼優位性、方位選択性、方向選択性などのカラム構造が存在します。これらのカラム構造は発達期に再編成され形作られます(Keil et al., 2010)。おそらく神経回路の可塑性によって入力依存的に(Yoshimura et al., 2008; Smith et al., 2009)。
視覚野にカラム構造の無いマウスでも物は見えているので、カラム構造は無くてはならないというものではないのでしょう(Horton and Adams, 2005)。たぶん、何らかの理由で互いに相容れない(排他的な)性質、たとえば縦線または横線特異的に応答する性質をもつ細胞などが限られたスペースに存在した場合に自己組織的に生じるものでしょう。シミュレーションして神経細胞の基本的な性質からカラム構造が自己組織的に生じる可能性を示した例もありますね(Miller et al.,1989)。この現象にはおそらく、樹状突起の範囲、軸索の投射距離、興奮性か抑制性かの別、シナプス可塑性の性質などが関連するんじゃなかろうか。
大脳皮質のカラム自体はあってもなくても良いとすると、大脳皮質のカラムの数というよりも、大脳皮質の面積が接線方向に広がるとどんな機能的な意義があるかという点について考えたほうが実がありそうな気がします。
dhtanaka
ちょっと思い出したのですが、例えば視覚ではカラムごとに反応する刺激が異なりますよね。だから単純により多くの多様な刺激に対応出来るというのはあるのではないでしょうか。RT @suzuki190 カラムの数@TuneHike @symphonicworks
TuneHike
賛成。もっと言うと、感覚処理の意味では、ある程度計算を進めて特徴抽出したパラメーターをマップする空間だと認識してる。 @dhtanaka 単純により多くの多様な刺激に対応出来る @suzuki190 @symphonicworks
dhtanaka
実際、その種で重要な情報を担う皮質領野は広いですよね。マウスはヒゲ、カモノハシはクチバシの電気センサーに対応する領野が広い。この辺は@TuneHikeが詳しいかな。RT @suzuki190 カラムの数 @symphonicworks
suzuki190
一次視覚野のカラムが増えたら処理できる解像度が上がったり、より細かく傾きの違いを検出できたりしそうな気はしますね。RT @TuneHike: 賛成。もっと言うと、感覚処理の意味では、ある程度計算を進めて特徴抽出したパラメーターを@dhtanaka @symphonicworks
suzuki190
あと齧歯類と比べると霊長類なんかはそもそも領野の数が多いですよね。単純に齧歯類では境界があいまいで区分できないだけなのか、表面積が拡大すると領野が増えるのかはちょっと興味があります。RT @dhtanaka: @TuneHike: @symphonicworks
大脳皮質が接線方向にが拡大した場合、見かけ上のカラム構造の数は増えるでしょう。数だけでなく、マップ可能な特徴が増える可能性もあります。カラム構造は相互接続しており、より下流のカラムでは、上流のカラムの特徴を組み合わせた特徴をマップすることができるでしょう。実際には、より大きな単位である領野間の投射により、モードの異なる感覚入力(視覚と体性感覚など)の両方の特徴をマップする細胞も発見されてます(Rizzolatti et al., 1981a, 1981b)。これらのことから推測するに、大脳皮質の拡大はより高次の情報を抽出する新たな領域を生じる可能性なんかもあるかも。
ついでに、見つけたツイートにもコメント。呼ばれてないけど(笑)。
dhtanaka
進化系譜から考えると、マウスの大脳新皮質はヒトのそれの原始型ではなく、退化型である可能性が高い。
齧歯類の脳は霊長類とは異なる進化を遂げたという仮説に無理やり解釈を与えてみましょう。共通の祖先から分岐した後、それぞれに選択圧がかかって、霊長類の脳は大型化、齧歯類のは小型化した。それぞれに有利な点が想像できます。
- 大型脳(霊長類)
- 高次の情報を抽出するなどの多様な機能を獲得。遅い。複雑。
- よく考えて獲物を狩る。
- 前述のように、脳の大型化、大脳皮質の表面積の拡大に伴ってより高次の情報を抽出する機能を獲得した可能性があります。
- 小型脳(齧歯類)
- 少数の最低限必要な機能に最適化。速い。単純。
- いらんことを考えてると食われる。
- マウス脳にはカラム様の構造として体性感覚野のバレル構造が知られていますが、ネコや霊長類とは異なり、視覚野にカラム構造は見出されていません。バレル構造は、マウスの体性感覚野のひげから入力を受け、他の体の部位からの入力を受ける領域と比べて極端に大きいんですね(Petersen 2007)。これは感覚入力をひげの感覚情報に特化し、ひげからの入力を確実に他の領野へ伝えるのに適しているでしょう。脳が最低限必要な機能に最適化された例とも考えられます。
dhtanaka
マウス大脳新皮質の興奮性神経細胞は、同じ幹細胞から生まれた細胞同士がより強く結合している。抑制性神経細胞でどうなのかはいまだ不明。霊長類でどうなのかもいまだ不明。
dhtanaka
Natureで納得。神経発生の知識と電気生理の神技の組み合わせで実現された卓越した仕事だと思います。http://ow.ly/3xYvD RT @symphonicworks 興味あり。論文教えてもらえないですか〜
この論文(Yu et al., 2009)によれば、同じ神経前駆細胞から生まれた細胞は互いに結合しやすい。その結果生じるマイクロカラムは脳の基本単位と言えるかもしれない。前述のように、シミュレーションによればカラム構造は物理的な構造によらず自己組織的に構築され得る(Miller et al.,1989)。自己組織化の結果、似たような性質のマイクロカラムが寄り集まることで、見かけ上のカラム構造を作っているに過ぎないのかも。個人的にはこのマイクロカラムを含む、局所回路の研究が面白いと思う(Ikegaya et al., 2004; Yoshimura et al., 2005; Yassin et al., 2010)。
たとえば、「一方向性の結合は双方向になる、または、それ以外の理由で強い双方向性の結合を生じる(Yassin et al., 2010)。神経回路はスモールワールドネットワークを形成する(Watts and Strogatz, 1998; Yu et al., 2008; Bonifazi et al., 2009)。」などの局所回路の基本条件だけで自己組織的にカラム構造ができるのか。その可能性と限界なんかをシミュレーションすると面白そう。
ほなまた
参考文献
- Keil W, Schmidt KF, L〓wel S, Kaschube M. Reorganization of columnar architecture in the growing visual cortex. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Jul 6;107(27):12293-8. Epub 2010 Jun 21.
- Yoshimura Y, Inaba M, Yamada K, Kurotani T, Begum T, Reza F, Maruyama T, Komatsu Y. Involvement of T-type Ca2+ channels in the potentiation of synaptic and visual responses during the critical period in rat visual cortex. Eur J Neurosci. 2008 Aug;28(4):730-43. Epub 2008 Jul 24.
- Smith GB, Heynen AJ, Bear MF. Bidirectional synaptic mechanisms of ocular dominance plasticity in visual cortex. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2009 Feb 12;364(1515):357-67.
- Horton JC, Adams DL. The cortical column: a structure without a function. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2005 Apr 29;360(1456):837-62.
- Miller KD, Keller JB, Stryker MP. Ocular dominance column development: analysis and simulation. Science. 1989 Aug 11;245(4918):605-15.
- Rizzolatti G, Scandolara C, Matelli M, Gentilucci M. Afferent properties of periarcuate neurons in macaque monkeys. I. Somatosensory responses. Behav Brain Res. 1981 Mar;2(2):125-46.
- Rizzolatti G, Scandolara C, Matelli M, Gentilucci M. Afferent properties of periarcuate neurons in macaque monkeys. II. Visual responses. Behav Brain Res. 1981 Mar;2(2):147-63.
- Petersen CC. The functional organization of the barrel cortex. Neuron. 2007 Oct 25;56(2):339-55.
- Yu YC, Bultje RS, Wang X, Shi SH. Specific synapses develop preferentially among sister excitatory neurons in the neocortex. Nature. 2009 Mar 26;458(7237):501-4. Epub 2009 Feb 8.
- Ikegaya Y, Aaron G, Cossart R, Aronov D, Lampl I, Ferster D, Yuste R. Synfire chains and cortical songs: temporal modules of cortical activity. Science. 2004 Apr 23;304(5670):559-64.
- Yoshimura Y, Dantzker JL, Callaway EM. Excitatory cortical neurons form fine-scale functional networks. Nature. 2005 Feb 24;433(7028):868-73.
- Yassin L, Benedetti BL, Jouhanneau JS, Wen JA, Poulet JF, Barth AL. An embedded subnetwork of highly active neurons in the neocortex. Neuron. 2010 Dec 22;68(6):1043-50.
- Watts DJ, Strogatz SH. Collective dynamics of 'small-world' networks. Nature. 1998 Jun 4;393(6684):440-2.
- Yu S, Huang D, Singer W, Nikolic D. Cereb Cortex. A small world of neuronal synchrony. 2008 Dec;18(12):2891-901. Epub 2008 Apr 9.
- Bonifazi P, Goldin M, Picardo MA, Jorquera I, Cattani A, Bianconi G, Represa A, Ben-Ari Y, Cossart R. GABAergic hub neurons orchestrate synchrony in developing hippocampal networks. Science. 2009 Dec 4;326(5958):1419-24.
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一口食べれば溢れ出す肉汁。蓬莱の豚まん
これはうまい#19
蓬莱の豚まん
http://www.551horai.co.jp/syouhinn/eiibutamann.html
551の蓬莱といえば、大阪で知らぬ人はいない超有名店ですね。
特にこの豚まんが有名。
本店はなんば戎橋にありまして、年末に店の前を通ったらえらい行列ができてましたよ。
大阪に帰省した方々ですかね〜。
僕も食べたかったのですが、あまりの行列にその日はパス。
後日手に入れた蓬莱の豚まんの美味しいことといったら。
ほんのり甘い皮。
一口食べれば溢れ出す肉汁。
結構こってりめなのですが、ときどき無性に食べたくなるのですよ。
あぁ、これまたビールに合う。
大阪から離れて下宿している学生さんにこれをお土産にすると、とても喜ばれますよ〜。
JR新大阪、大阪空港(伊丹)と関西空港ではチルドの豚まんもあるようなので、お土産にはこちらをどうぞ。
今すぐ食べたくなってしまった方にはネットショップもありますよ。
ほなまた
- 戎橋本店
- JR新大阪駅構内店
- 大阪空港店
- 関西空港店(2カ所)
- 営業時間:7:00〜22:00
- 定休日:無休
- 電話番号:0724-56-8106
- 関西空港旅客ターミナルビル2階:国内線到着口ロビー近く/ギフトコート北内
- 蓬莱オンラインショップ
- これら以外の店舗情報については下記参照
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ツイッターにおけるマタイ効果
マタイ効果というのは、「おおよそ持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまで取り上げられるであろう」っていうやつですね(詳しくはwikipedia参照)。ツイッターにおけるマタイ効果(今勝手に付けました)とは、フォロワー数の多いアカウントはさらにフォロワーを集め、そうでないアカウントはそうでないままという現象を指します。ツイッターにおけるマタイ効果によってフォロワーの多いアカウントのフォロワー数は正のフィードバックがかかるってわけです。
なんでそうなるのか?以下にいくつかの可能性をみましょう。
1.アカウント検索はフォロワーの多い順に表示される
アカウント検索などではフォロワー数や、単位時間あたりのフォロワー増加数の多い順に並びます。たとえばプロフィール検索のツイプロでは検索結果がフォロワーの多い順に表示されます。アカウント検索の結果は上から順に見て、最後まではあまりみないですよね?つまり、フォロワーの多いアカウントはアカウント検索の上位に来るため人の目につく機会が増えるわけです。
2.フォロワーが増えれば被リツイートが増える
フォロワーさんが多ければ被リツイート(RT)数が増えます。ツイートを読んだ人当たりのRTする確率が変わらないと仮定した場合、読んだ人が増えればRTの数は増えるでしょう。リツイートはアカウント名をフォロワーさんたちに宣伝してもらうようなものなので、そのリツイートを見た方がフォロワーさんになることがあります。
3.フォロワーが増えれば被ファボが増える
被リツイート数が増えるのと同じ理由で、ふぁぼったーなどの被ファボ(お気に入り)数を基準にしたサービスでは、ツイートごとの単位時間あたりの被ファボ数や、新規性を基準にツイートを探し出すので、こちらも人目につく機会が増えます。
いかがでしょうか。これらの現象はそれぞれが相加的もしくは相乗的に働き、フォロワーが多いアカウントが優先的にフォロワーを増やすという正のフィードバックをもたらすことでしょう。ではどうやってフォロワーを増やすか。最も単純なのはフォロー数を増やすっていう方法ですね。これまでの傾向によると、ツイッターではフォローすると1/3〜1/2くらいの方にフォローしていただけるようです。以前の記事では自分の興味のあるツイートをしているアカウントをまず100フォロー目指すことをおすすめしました。その続きですね。もうちょっとフォローを増やすとポジティブフィードバックがかかるんじゃないかな〜と。僕の例ですと、以前紹介したTwitterプロフィール検索などで地道に面白ツイートをしている方をフォローして回ったところ、フォロワーさんが300を超えた頃から徐々にフィードバックが掛かってきたように思います。せっかくなので、このツイッターにおけるマタイ効果をうまく使ってみましょう。面白いツイートをしているのにフォロワーが少ないってのは世界の損失ですよ。
ほなまた
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