鬼軍曹の過去のお話。論文セミナーってこんな感じでした。


Nikon D3000, Nikkor-S・C Auto 50mm F1.4
 今日はいわゆるジャーナルクラブとか、輪読会とか、論文セミナーとか呼ばれるイベント(以下、セミナー)のお話でもしましょうか。理系の大学院に入って研究室に所属すると、多くの場合週に一度か二度くらいのセミナーがありますよね。セミナーの当番の頻度や内容は研究室によって様々だと思います。当番の頻度は多いところで月に一度、少なくとも年に一度は当たることでしょう。

 僕のところは年に一〜二回セミナーの当番が回ってきましてね。準備には慣れた人で数日。最初のうちは一ヶ月くらいかけるひともいました。あ、もちろん他に実験などしながらですよ。月曜の朝9時から始まって、持ち時間は1時間半で二人発表するのでだいたい昼過ぎに終わります。神経科学分野の論文一報を読み込み、論文の内容を吟味し、パワーポイント形式でスライドを作って発表(博士後期課程の院生さんは英語)。自分が著者になったつもりで発表するって先輩に言われましたわ。

 論文を読むときには著者の主張を理解するだけでなく、その内容を吟味します。著者の主張は図に示された結果から導けるか。論理の飛躍はないか。方法に示されたやりかたで図に示されたような結果は得られるのか。などなど。知らないことは勝手な推測で補わないほうがいいですよ。本文を読んで知らない結果の引用や手法が出てきたら、Reference(参照文献)をチェック。それでもわからなかったら孫引き、ひ孫引き。何年か経つとその研究分野の背景となる知識が増えてくるので、それほど大量に参照文献を読まなくても論文を読めるようになると思いますよ。

 慣れないうちは、論文をひと通り読むとわかったつもりになっちゃうんですよね。でもね、二度三度読むと最初に読んだときと違うように読めてくるから不思議なもんです。終いには、だんだんその論文のアラがわかってきて、こんなもんを発表して大丈夫なんだろうかと不安になるんですね〜。どんな論文にも必ずアラがあるんですよ。まぁ、そこまで読めてればだいたい大丈夫なんですけどね。論文の選択が間違っていなければ。

 論文をどうやって選ぶか。僕の方法は単純で、サーベイしておいた論文の中から特に面白い論文をセミナーで発表するという方法です。自分の研究分野の雑誌を毎週一度、各誌の最新刊の目次を読んで面白そうな論文を選んで要旨と図表をざっと読む。興味が出た場合には印刷してひと通り読む。印刷して読んだ論文の中から特に面白い論文をセミナーで発表するってかんじです。まぁ、論文読みは研究者にとって筋トレみたいなもんですよね。

 雑誌は通常週に一度サーベイすればOK。更新頻度は雑誌によって違うんだけど、どんなに高頻度でも週刊なので。僕は毎週金曜日の朝に時間を取ってます。チェックする論文は、僕の分野(神経科学)だと、Nature, Science, Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), The Journal of Neuroscience(ここまで週刊), Neuron(月に二回), Cell(隔週刊), Nature Neuroscience(月刊)ここらへんがメジャーどころ。あとは生理学寄りだったら、Journal of Neurophysiology、発生生物学寄りだったら、Developmentかな。経験的に面白い論文が多い雑誌を選んでいるけど、結果的に高インパクトファクター(IF)誌ですね。

 さて、セミナーの内容に戻りましょうか。質問は随時。そう、随時。どうやったら論文が読めた=理解したことになるでしょう?もうちょっと厳密に。どうやったら、「この論文を読んだとのたまっている学生(例えば)がその論文の内容を理解しているかどうか」を周囲の人が判断できるのでしょうか。僕が思うに、「学生さんに繰り返し質問して、質問者が自分の知識と図表で示された結果から判断して論理的に妥当な回答が得られたら」じゃないですかね。そんなわけで、セミナー時の質問は超重要です。だいたい教授陣から質問がたくさんくるので、発表は45分くらいで終わるように練習しておかないと、時間オーバーしますね。質問に適切な答えができない=論文の内容を理解していないようなときは、翌週にやり直し。そう、やり直し。僕も最初のセミナーはやり直しでした。結局、論文の選択が悪くて、翌週にやり直しても終わらなかったですけどね。

 研究室に入りたての四回生は論文の読み方がわからないので、いきなりセミナーで発表するときっとえらいことになります。そのままだと誰も得をしないので、チューターと呼ばれる制度がありまして、四回生には先輩(多くの場合博士課程の院生)がついて論文の読み方などを指導してました。論文の読み方には伝達可能なコツや技術があって、それを習得すれば誰でも読めるようになるので、知っている人に聞いたほうがよいですよ。論文の読み方については過去記事「おもしろ論文は三度読む。高専〜大学生くらいからの論文の読み方」など参考になれば幸いです。僕も何度かチューターやりましたけど、僕のついた学生さんたちは皆さん優秀だったもんで、僕はそんなに大変じゃなかったですわ。鬼軍曹とか呼ばれてましたけど(笑)。

 先生方及び諸先輩方に厳しく指導していただいたお陰さまで、ある程度まともに論文が読めるようになったと自分では思っています。この場を借りて御礼申し上げます。


さて、今日はこれくらいにしときましょうか。


今日のまとめ

  • セミナーの結果って半分以上は論文選びで決まるんじゃないかな
  • 論文読みは研究者の筋トレみたいなもんですよね
  • 論文の読み方は知っている人に教えてもらおう(身近な鬼軍曹とかに(笑))


ほなまた


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