ブラウザの文字サイズと一次視覚野細胞の方位選択性

以外と知られていないけど、結構便利な小技。
FireFoxなどのブラウザで
Ctrl++で拡大。
Ctrl+−で縮小。
文字を読むときは画面からはみ出さない限度まで拡大して読む。
文字は大きい方が早く読める(と思う)。
以下その理由について妄想。


 一次視覚野の細胞は方位選択性をもつ。方位選択性というのは、ある細胞が特定の角度の線分の視覚入力に応答して発火する性質。簡単にいうと、見た線の角度に反応する性質。それぞれの細胞はお気に入りの角度があり、その角度の刺激がきたとき、より高頻度に発火する。つまりその細胞の発火頻度は視覚入力の角度をコードする。いろいろな角度に応答する細胞たちが一次視覚野に存在し、これの組み合わせによってあらゆる線分を表現できる。たとえば、ものの輪郭はすべて線分で表現できる。そのため、この方位選択性は視覚入力から情報を検出するためのもっとも基本的な性質の一つであると言えるだろう。
 方位選択性についてより詳しく解析すると、お気に入りの角度のほかに、線分の太さにもお気に入りがあることが示されている(Niell and Stryker, 2008)。マウスだと視力の限度は概ね0.5 cpd(Cycles per degree, 一視野角あたりの線分の本数。Prusky and Douglas, 2003)であるが、その太さがお気に入りの細胞はより太い(0.04 cpd)線分に応答する細胞と比べて少ない。
 Regan(1978)の研究から推測すると、視力の限界よりも太い線分に多くの細胞が応答するという傾向はヒトでも同じようですね。Dobson and Telle(1978)のFig. 1の対照表によれば、いわゆる視力1.0で見える限界は30 cpd。視力0.5なら15 cpd。んで、Regan(1978)で示されていた最大応答を示す視覚刺激の空間周波数はだいたい2~8 cpd(時間周波数が7 Hzの場合。)。形を認識する(意識に上る)ためにはある程度の数の細胞が応答する必要があると仮定すると、視力の限界よりも太い線分に多くの細胞が応答するのであれば、大きな字の方が早く読めるかもしれないな〜と思うわけです。(妄想です。)
 視力検査の時のCマーク(ランドルト環)は切れ目の幅を基準にしているし、書いた字の形を認識するにはつながりよりも切れ目が限界を決めていそうなので、切れ目の幅を考えたほうがよさそうですね。そうすると、視力1.0のヒトは1 m先のディスプレイを見る場合、約0.3 mmの切れ目を判別できるわけで、これが30 cpd。19 inch 1280x1024のディスプレイだと1 pix(ピクセル)は大体0.3 mm。よくできてますね。ちなみに最近話題のiPhone4のレチナディスプレイの1 pixは0.078 mm。視力1.0のヒトは10 cmまで近寄ると、0.03 mmの切れ目が見えるはずですね、、、まぁそんなに寄るヒトはいないですかね。閑話休題
 たとえば、3 cpdだと幅が10倍なので、3 mm、10 pix。6 cpdだと1.5 mm、5 pix。あるていど複雑な字の隙間が1.5~3 mmくらいになるように大きさを調節するといいんじゃないですかね。というわけで、ブラウザの表示は「Ctrl++」を使ってある程度大きくしておくのがおすすめです。


ほなまた
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参考文献


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