原理は意外とシンプルな超解像蛍光顕微鏡。STED顕微鏡

論文紹介#16


J Neurosci. 2010 Jul 14;30(28):9341-6.
Imaging Living Synapses at the Nanoscale by STED Microscopy.
Nagerl UV, Bonhoeffer T.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20631162


 Stimulated emission depletion(STED)顕微鏡は光の回折限界を超えてより細かい物を見るための超解像蛍光顕微鏡の一種ですね。STEDというのは蛍光分子が励起された直後に、放出する光(蛍光)よりも長い波長のSTED光が当たると、蛍光分子が脱励起されるという現象でして、この現象をうまくつかったのがこのSTED顕微鏡なんですね〜。
 STED顕微鏡で使うのは二種類の光。一つはできるだけ(回折限界まで)照射範囲を絞った励起光。もう一つは励起光スポットの周囲を囲むようにドーナツ型に成形したSTED光。YFPを蛍光分子として使う場合はそれぞれ490 nmと598 nm。いずれもピコ秒まで照射時間を狭めておきます。このとき、STED光のドーナツの穴を励起光スポットよりも小さくしておくのがポイントです。ほいで、励起光を照射した直後にドーナツ型のSTED光を当てることで、中心以外の励起された蛍光分子を脱励起するわけです。その結果、STED光のドーナツの穴の部分(元の励起光スポットよりも小さい範囲)でだけ蛍光分子は蛍光を発するんですね。これで励起光スポットの大きさは回折限界を超えずに、回折限界よりも細かい範囲で蛍光分子の蛍光を放出させることが出来たわけです。まぁ詳しくは論文を読んでみて下さいな。
 この論文の第一著者、Nagerl博士が今週の金曜日に岡崎の生理研セミナーをするそうなので、興味のある方は行ってみてはいかがでしょ。


日 時 2010年07月23日 16:00~17:00
場 所 山手3号館9階セミナー室B
演 者 Valentin Nagerl(Professor of neuroscience, University of Bordeaux 2, France)
演 題 イメージングのニューウェーブ:STED microscopyを使用したシナプスの高解像度イメージング
http://www.nips.ac.jp/research/seminar/entry/2010/07/sted-microscopy.html


ほなまた
大学院生募集中! 名大環研神経系1
大学院入学希望者向けの研究室情報。名大環研神経系1(視覚神経科学)


参考文献


関連記事