Sox2シグナルの上流を探る。Sox2 N-4エンハンサーの塩基レベル解析

論文紹介#15


 iPSを作るときに導入されたことでもおなじみのSox2(SRY-box 2)という転写調節因子。このSox2のエンハンサー配列のひとつ、N-4エンハンサーを塩基レベルで詳細に解析したのが今回紹介する論文です。


Dev Growth Differ. 2010 Jun;52(5):397-408.
Regulation of Sox2 in the pre-placodal cephalic ectoderm and central nervous system by enhancer N-4.
Saigou Y, Kamimura Y, Inoue M, Kondoh H, Uchikawa M.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20507355


 遺伝子の下流シグナルについてはその遺伝子を強制発現や欠失させた動物でその影響をみることで調べることが出来ますが、上流を調べるとなるとまた大変なんですよ。たとえば、他の遺伝子を操作して目当ての遺伝子の発現を見る方法(たとえば、in situ hybridizationで、なんとかKOマウス脳におけるSox2の発現を調べるとか)では、その影響が間接なのか直接なのかは判断が難しいのです。
 著者らのグループではSox2の直接の上流シグナルを知る、つまり、Sox2の発現がどのように制御されているかを知るために、ゲノム上のエンハンサー配列を解析するという方法を採りました(Uchikawa et al., 2003)。まずSox2 5'側のゲノム配列をいろんな長さで切り出して、エンハンサーとして働くか、動物の中でSox2の発現を再現できるか検証したんですね。すると、いくつかそれらしい配列が見かったんですよ。それで、神経系や感覚器の前駆体などいろんなところでSox2の発現を制御しているそれぞれのエンハンサー達にN-1 エンハンサー, N-2 エンハンサー...と名前をつけました。というのが前置き。
 さてここからがこの論文のお話。著者らは、中枢神経系の発現を模倣するN-4エンハンサーの配列をどんどん削っていって核となる配列を探す。動物に導入してSox2の発現を再現できるか検証する。配列を削って、、、以下繰り返しっていうものすごく地道な作業を繰り返しました。最終的には、Sox2 N-4エンハンサーの発現(の一部)を再現する、塩基配列が同定されたわけですね。ここまで細かくエンハンサー配列を解析した例はあまり無いんじゃないですかね〜。
 詳細は論文を見ていただくとして、個人的には見つかったエンハンサーのもうちょっと後期(生後すぐから3週目くらいに掛けて)の発現パターンが気になりますね〜。おもしろいトランスジェニックマウスが作れそう。400 bp(50 bp x 8 rep)だったらベクターにも載せやすそうだし。要チェック。


ほなまた
大学院入学希望者向けの研究室情報。名大環研神経系1(視覚神経科学)


参考文献

  • Dev Cell. 2003 Apr;4(4):509-19. Functional analysis of chicken Sox2 enhancers highlights an array of diverse regulatory elements that are conserved in mammals. Uchikawa M, Ishida Y, Takemoto T, Kamachi Y, Kondoh H.


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