父マウスが仔マウスを(迅速に)認識するためにはニューロン新生が必要(かも)

論文紹介#11


今回は(も?)ネタっぽい論文をひとつ。


Nat Neurosci. 2010 Jun;13(6):753-8. Epub 2010 May 9.
Paternal recognition of adult offspring mediated by newly generated CNS neurons.
Mak GK, Weiss S.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20453850


Nat Neurosci.誌に載ってたCommentはこちら。
Nat Neurosci. 2010 Jun;13(6):652-3.
Father and child reunion.
McCarthy MM.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20498682


 父マウスが生き別れになった(成長した)仔マウスを迅速に認識するためには、両者が再会したときに父マウスの嗅球及び海馬で新生するニューロンが必要かもしれないっていうお話。
 行動実験(対象に馴染みがあるかないかで違いの現れる(たぶん)行動を指標にしてる)がメインで、ブロモデオキシウリジン(Bromodeoxyuridine, BrdU)を指標に細胞新生を検出してます。
 BrdUは通常、生体内に存在しないんですが、BrdU水溶液を腹腔内注射すると簡単に体中へ行き渡ります。BrdUは他のヌクレオチドと混ぜておくと、DNA合成の際にチミジン(T)の代わりに取り込まれるんですよ。それで、BrdU注入後に専用の抗BrdU抗体で免疫組織化学(免染)すると、BrdUを注入した時にDNAを合成していた(分裂直前の)細胞が染まるので、細胞新生の指標として使えるわけですね。
 ポイントはこのニューロン新生に必要な遺伝子を同定し、壊して、ニューロン新生と仔マウスの認識との因果関係を調べたところでしょう(おそらく)。
 新生したニューロンがどんな回路に組み込まれてどう働いているのかとか、興味深いですね〜。
 そうそう、このお話はマウスの実験ですからね。ヒトでどうなってるかは分かりませんよ〜。


ほなまた
大学院入学希望者向けの研究室情報。名大環研神経系1(視覚神経科学)


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