孤独な大脳皮質の発達異常

論文紹介#13


Maturation of "neocortex isole" in vivo in mice.
Zhou L, Gall D, Qu Y, Prigogine C, Cheron G, Tissir F, Schiffmann SN, Goffinet AM.
J Neurosci. 2010 Jun 9;30(23):7928-39.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20534841


 これまでにも視床皮質軸索の失われた変異動物の系統やその原因遺伝子はいくつか知られていたけれども、大脳皮質が(あるていど)発達する時期までは育たなかった。つまり、視床と皮質の間の投射が無い状態でどんな発達をするのか分からなかったし、行動実験なんかは出来なかったわけ。今回紹介する論文で調べられている変異マウスは視床と皮質の間で投射が無い、孤独な大脳皮質(Neocortex Isole、勝手訳)をもつ動物なのですが、どうやら生後20日くらいまで生きられたようです。
 結果としては錐体細胞の形態など、大脳皮質の発達に異常が見られたようで、視床軸索を改めて投射させるとこれらの異常が回復する等のレスキュー実験ができると面白そうですね。たとえば、移植実験(下記参考文献)はできるかな。もしかしたら、やったけど変わらなかったのかもしれないですね。
 この変異動物の大脳皮質の発達異常の原因は大脳皮質が孤立している以外にもあるかもしれないし、そうだとしても皮質と視床の間の何が発達に関与しているかは分からないですが、大脳皮質への入出力が無いデフォルト(default)の状態の一例として興味深いですね〜。


ほなまた
大学院入学希望者向けの研究室情報。名大環研神経系1(視覚神経科学)


参考文献

  • Electrophysiological study of synaptic connections between a transplanted lateral geniculate nucleus and the visual cortex of the host rat. Hamasaki T, Komatsu Y, Yamamoto N, Nakajima S, Hirakawa K, Toyama K. Brain Res. 1987 Sep 29;422(1):172-7.


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