長波長励起で深いところまでよく見える、とても高そうな二光子励起蛍光顕微鏡。

論文紹介#9

この顕微鏡ほし〜。けど高そ〜。2億円くらい?


Deep tissue multiphoton microscopy using longer wavelength excitation.
Kobat D, Durst ME, Nishimura N, Wong AW, Schaffer CB, Xu C.
Opt Express. 2009 Aug 3;17(16):13354-64.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19654740


 two photon excitation @ 1280 nm。励起光はTi:S oscillator (Tsunami, Spectra Physics)とTi:S-pumped optical parametric oscillator (OpalBB, Spectra Physics)(2009年6月製造中止。代替品はInspireかな。)との組み合わせで作ってる。二光子励起蛍光顕微鏡(TPLSM)があればそこのレーザー部分にoptical parametric oscillatorを後付けするだけで作れるのかな?ぱっと見、お手軽っぽい(高そうだけど)。
 脳の血管を表面から1 mm深まできれいにイメージングしてる(還流固定した直後の血管にAlexa680-dextran入りのアガロース流して染めてる。)。普通のTPLSMの約二倍。でも生理研の根本研究室ではTPLSMで1 mm深を見てる(しかもin vivo。)。よほどチューンされているんでしょうね。ということは、根本研の顕微鏡を1280 nm仕様にすると2 mmまで見える?まさかねぇ。2 mmになれば海馬が見えちまいますよ(たぶん)。
 この間紹介した影パッチとの相性がとてもよさそう。周りにAlexa 647をまき散らしながらパッチする細胞を探せる。
 1280 nmの二光子励起で最適な蛍光色素は、alexa 647とCy 5.5。吸収極大は650 nm近辺。650 nmで励起される蛍光タンパク質があればThy1プロモータで発現させて深いところの神経細胞の様子をin vivoで見られそう。さがした限りでは見つからなかったけどね(最も近いのはAQ143, Ex 595 nm, Em 655 nm。(Day and Davidson, 2009)参照。)。ってか、励起光の波長を1200 nmにすれば良いのか?すぐできるじゃん。
 予算と技術があればね。


ほなまた
大学院入学希望者向けの研究室情報。名大環研神経系1(視覚神経科学)


参考文献
Chem Soc Rev. 2009 Oct;38(10):2887-921. Epub 2009 Aug 4.
The fluorescent protein palette: tools for cellular imaging.
Day RN, Davidson MW.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19771335
 Chem Soc RevのGFPノーベル賞記念号(たぶん)のレビュー。古今東西の蛍光タンパク質についてのまとめ。さすがにきれいにまとまってます。一覧表とか。


おまけ
○二光子励起蛍光顕微鏡のための後付けシグナル増強装置。相性良さそう。
Opt Express. 2009 Apr 13;17(8):6421-35.
Enhanced fluorescence signal in nonlinear microscopy through supplementary fiber-optic light collection.
Engelbrecht CJ, Gobel W, Helmchen F.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19365467


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