ヘビはピットで赤(外)を見る

論文紹介#5
一般向けおもしろ論文です。

Nature. 2010 Apr 15;464(7291):1006-11. Epub 2010 Mar 14.
Molecular basis of infrared detection by snakes.
Gracheva EO, Ingolia NT, Kelly YM, Cordero-Morales JF, Hollopeter G, Chesler AT, Sánchez EE, Perez JC, Weissman JS, Julius D.

ある種のヘビは鼻の横にあるピットとよばれる穴の開いた器官で熱を感知し、敵や獲物など位置を知覚していることはよく知られていましたが、その仕組みは不明でした。
仮説としては、ピットに入ってきた熱が何らかの化学反応を誘発してシグナルになるとか、ピットに網膜みたいな構造があって赤外線を見ているとかいろいろと考えられますが、この研究で著者らはTransient Receptor Potential channel A1(TRPA1)という温度感受性陽イオンチャネルが、ピットに神経突起を投射する三叉神経節(trigeminal ganglia, TG)に存在し、これを使って赤外線を感知していることを明らかにしました。

Fig.1にピットの断面図が表示されています。
まるでピンホールカメラみたいな構造ですね。
実際ピットの入り口がピンホールになって、そとの赤外線像が内部の空洞に投影されると考えられています。
その空洞の壁面に三叉神経節線維が投射しており、そこで赤外線に応答してTRPA1チャネルが開くと三叉神経節を介して中枢へ信号が伝わってゆくというわけです。
光を検知するために使う道具(TRPA1@ピットとロドプシン@網膜)は違うけど、システムは目によく似てますね。

発生の時にはいろんなところで同じ転写調節因子やモルフォゲンを使い回しているので、ピットができあがるときも目、耳、鼻などの感覚器と同じようなもんを使っているかもしれないですね〜。


ほなまた


論文紹介#4 自由に泳ぐ魚の動きと神経細胞の発火活動を同時に観察する
論文紹介#3 覚醒ラットの大脳皮質で局所細胞外電位(LFP)とニューロンの発火活動は閾値下の相関を示す
論文紹介#2 平面上の微小なNGF濃度勾配は、方向転換(turning)よりも相対的な成長度(growth-rate)の調節によって軸索を誘導する。
論文紹介#1 局所的なEph密度の上昇がシグナリングを引き起こす。ほか