きっかけは軸索末端からやってくる。逆行輸送されたNGF-TrkAによるポストシナプス構築の制御

論文紹介#17
Long-Distance Control of Synapse Assembly by Target-Derived NGF.
Sharma N, Deppmann CD, Harrington AW, St Hillaire C, Chen ZY, Lee FS, Ginty DD.
Neuron. 2010 Aug 12;67(3):422-434.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20696380


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Signaling Endosomes Trigger Synapse Assembly.
Newbern JM, Li X, Snider WD.
Neuron. 2010 Aug 12;67(3):352-354.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20696371


 末梢神経の回路が出来上がるときに、対象の器官に到着したある種類の神経節細胞の軸索は、受容体(TrkA)を介して神経栄養因子(NGF)を対象の器官から受け取り、細胞内に小胞という形で取り込む。このようにして取り込まれたTrkAは細胞体まで逆行輸送され、その細胞の生存を正に調節するなどしているというは結構有名な話でした(Bothwell, 1995)。この論文では一歩進んで、軸索から樹状突起まで逆行輸送されたTrkAが、その細胞が入力を受けているシナプス(ポストシナプス)の構造を正に調節することを示したのです。つまり、軸索が出力先に着いてから、樹状突起で入力用の仕組みを組み立ててたってわけですね。
 逆行輸送されたTrkAの機能を調べるために、以前ツイッターでちらっとツイートしたAXISと同様のものを使ったようです。これは、ひとつの細胞の細胞体と軸索末端を別々の溶液にさらすことのできる装置ですね。これを使うと、軸索末端だけにNGFをかけたりできるわけです。まぁ装置の詳細は参考文献(Park et al, 2006)を読んでくださいな。
 個人的に気になるのは、p75がどうやってTrkAシグナルを調節しているのかっていうこと。とりあえず、直接NGF-TrkA-p75っていう複合体はつくらないっぽい(Wehrman et al., 2007)ので、たとえば、小胞が再び細胞膜に融合して細胞外に出たNGF-TrkA複合体からNGFが一旦離れて、p75に再結合してポストシナプスが増えすぎないようにネガティブフィードバックしているとか。さらにそこからNGFが離れてプレシナプスにシグナルを、、、まぁ妄想です。


ほなまた
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参考文献


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