コメント@脳にフィットするインプラント用電極アレイ

論文紹介#番外
WIRED VISION日本語版の記事、脳にフィットするインプラント用電極アレイはてブで注目されているようですね。
僕もブレインマシンインターフェース(Brain-machine interface, BMI)やらブレインコンピュータインターフェース(Brain-computer interface, BCI)やらに興味があるので、さらっと元論文を見てみました。


Nat Mater. 2010 Apr 18.
Dissolvable films of silk fibroin for ultrathin conformal bio-integrated electronics.
Brian Litt and John A. Rogers et al., Kim DH, Viventi J, Amsden JJ, Xiao J, Vigeland L, Kim YS, Blanco JA, Panilaitis B, Frechette ES, Contreras D, Kaplan DL, Omenetto FG, Huang Y, Hwang KC, Zakin MR, Litt B, Rogers JA.


 みたところ、この研究のポイントはシルクの保持材のようですね。シルクメッシュは保持材として充分な強度があるうえに柔軟でかつ生分解性だというところがうまく用途に合致したようです。できあがった電極でとらえられている電位変化(Fig. 5)は視覚誘発電位(visual evoked potential, VEP)ですね〜。いつも見ているやつですわ。表面からでも結構きれいに取れるもんですな。
 低侵襲性と多情報量を両立することがBMIを実用化するためのひとつの方向性だと思います。この研究は比較的低侵襲な方法で、より多くの情報を得ようというねらいがうまくいった例なんちゃいますかね。ただ、皮膚下に埋め込んで炎症が起きないことと、皮質の表面に載せて長期間安定した記録が出来ることは別の話なので、検証が必要だと思いま〜す。もうやってるのかな?


ほなまた
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おまけ
BMIの分類
John P. Donoghue(2008)のレビューより改変
非侵襲型
└経頭皮(Scalp)記録
 └いわゆる脳波(Electroencephalography, EEG)
侵襲型
├周皮質(Epicortical)記録(勝手訳)
│└皮質脳波(Electrocorticography, ECoG)
└実質内(Intra-parenchymal)記録(勝手訳)
 ├局所電場電位(Local field potential, LFP)記録(勝手訳)
 └ユニット記録(Unit recording)
表の下ほどシグナル当たりの情報量が多い(by Dr. Donoghue)。


参考文献
○John P. Donoghue(2008)のレビュー
Neuron. 2008 Nov 6;60(3):511-21.
Bridging the brain to the world: a perspective on neural interface systems.
Donoghue JP.

○今週のNature(Research highlights)でも紹介されてますね。
Nature 464, 1106 (22 April 2010) | doi:10.1038/4641106c; Published online 21 April 2010
Biomaterials: Electronics on the brain


論文紹介#6 どっちの活動?視床か皮質か両方か。
論文紹介#5 ヘビはピットで赤(外)を見る
論文紹介#4 自由に泳ぐ魚の動きと神経細胞の発火活動を同時に観察する
論文紹介#3 覚醒ラットの大脳皮質で局所細胞外電位(LFP)とニューロンの発火活動は閾値下の相関を示す
論文紹介#2 平面上の微小なNGF濃度勾配は、方向転換(turning)よりも相対的な成長度(growth-rate)の調節によって軸索を誘導する。